遭難した韓国人登山ツアーの受け入れの問題点

韓国の登山ツアーの一行が中央アルプスの宝剣岳から檜尾にかけてのルートで遭難し死者もでています。

準備不足、軽装が遭難の原因とマスメディアには書かれていました。
本当にそうでしょうか?
確かに遭難の直接の原因はそうでしょう。
だが、私はもっと根本的な要因があると考えています。
そこを踏まえないと、同様の事態がこの先にも繰り返されると思います。

私が思う一番の問題は韓国と日本の登山と言うものの認識の違いです。
韓国では登山はとっても手軽なレジャーです。
ソウルから電車で30分も走れば、そこは都会の喧噪とはかけ離れた野山が拡がっています。駅を出ると登山口にはさながら門前町の様に、登山に関する様々な用品店が軒を並べ早朝から営業している。
極端な話、クレジットカードがあれば必要な装備は登山口で買い揃える事が可能なんです。

韓国国内には日本の高山と呼ばれるような山は有りません。せいぜい2000mぐらいのもの。
だから登山と言う時に韓国の人達が思い描くのは日本の日帰りの低山がせいぜいだと思います。

それでいて韓国では登山は盛んです。数年前でも登山の雑誌も5〜6誌はあったし、登山用品店もナンデムン市場だけでも数軒ありました。
神田より多いかもしれない位の店舗です。
それだけの人達が韓国では登山を楽しんでいるんです。

登山を楽しんでいれば、どうしたって高い山に登って見たくなるものです。
その時、韓国の人達はどこを目指すか?

中国は登山自体あまり盛んではないうえに山も大きく荷が重い。
台湾は山は手頃なんですが、軍の監視が厳しく好き放題に山に登る事は出来ません。入山には政府への届け出が必要ですし、監視役を兼ねたガイドの同行が大原則。
日本程気軽に山を登れる国はそうそうないんです。

今回の中央アルプスは千畳敷カールまではロープウェーで上がれ、木曽駒山頂までは1時間ほどと、とってもお手軽に思える山なんです。
韓国から来て始めてアルパインの世界を垣間見る…それには最適だと私も思います。

確かに手軽ですが標高三千の山で有る事にはなんら変わる事は有りません。一度荒れれば遭難死の可能性は低く無いんです。
今までにも多くの人命がこの山で失われています。その点を果たして登山ツアーの主催者は説明したのでしょうか?
疑わしいものです。

綺麗な高山植物が咲き乱れる千畳敷カールに写真を表に出して宣伝したのじゃ無いでしょうか?

天候に恵まれれば木曽駒〜宝剣〜檜尾のコースは素晴らしいものです。最高のアルパインハイキングを満喫出来ます。
ただ、天候が崩れるとちょっと厄介な山に変わります。宝剣は鎖場の連続で、慣れないと精神的な疲労が溜まります。濡れた岩は滑るし、高度感のあるコースは緊張の連続です。

檜尾はなだらかな稜線なんですが、目印になる様な目標に乏しくナビゲーションに苦労します。
ガスに巻かれると本当に厄介です。
山頂の直ぐ近くに避難小屋が有るのですが、それが見えないのでなかなかたどり着けないんです。
地図を頼りに行くにはかなり厳しい。

そんな山に…遭難の可能性が低いとは言えません。
私がガイドするなら、出発前に装備のチェックをさせて貰います。


携帯が繋がらないからとか、装備が軽装過ぎた…とか言ってますが、事前に適切な情報提供がなされなかった。
多分それが、この遭難の一番の要因なのではないかと私は思っています。

ただ、疑問が残ります。
宝剣を越えれば後は樹林帯の中を歩くので風雨の影響は和らぐ筈なんです。
とりあえず樹林帯まで頑張って、そこで温かい物を食べるなりして次を考える。私ならそうします。檜尾には避難小屋が有るわけですから。小屋までいけそうも無いなら、違法ですが枯れ枝で火を焚きます。

逆に宝剣の手前で天候の悪化が予想出来るなら千畳敷に下る選択もあったと思います。
道もキチンと整備されていますし、たとえ視界が悪くてもカールの半ばまで来れば嫌でもホテルが目に入る。
ホテルに逃げ込めれば低体温症になっていたとしても充分なケアを受ける事が可能なんですから。

韓国からの登山者を受け入れることは、これからも減らないと思います。
今回のルートはその中でも人気のルートになることでしょう。
日本の高山は韓国の登山とはどんな点が違うのか。
リスクを含めた適切な情報提供がなされなければ、今回の様な悲劇が繰り返される事になりかねません。

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