出鱈目ばかりの「装備品の選び方情報」が多すぎる。
さっきまで、そう思っていた。 ところが、たまたま見た某山岳地域のガイドの「装備品の選び方」を見て愕然とした。ところどころ違う・・・というレベルではない。殆どが出鱈目。理に合わないことばかりが書かれている。これでは勉強しろとはいえない。 アウトドアで使われる装備品には、100年以上に渡る長い開発の歴史がある。フィールドで厳しいテストをクリアしたデザインだけが、今の装備のデザインのベースになっている。したがって殆ど全てのデザインには、其のデザインでなければならない合理的な理由が存在する。選択肢が3つあり、其の中の1つではない。その1つでなければならないのだ。
端的な例を挙げる。 いわゆる登山靴だ。 私が見たサイトでは登山靴の条件として以下のものを挙げていた。
>登山に使う靴の絶対条件は
>1.足首を覆う部分がハイカット
足首がハイカットでないと、岩場、砂利、砂れきの続く山では靴の中に石が入ってしまう。普段と違って何度もはき直すわけにはいかないので、ハイカットは必ず選ぼう。
>2.靴を履いたときに足首がしっかりグリップされ安定している これは足首をひねってねんざするのを防止するためだ。特に疲労がたまり、足首への負担が増える下山時に、足首の安定がものをいう。
>3.靴底は厚くて堅め 先に述べたとおり、山の道は基本的に砂と岩。底が薄いものは切れて穴があくことがあり、柔らかい底は固い地面を歩くため疲れやすい。
>4.自分にあったサイズ・形
まず登山靴を足の横に置き、真上から見てつま先部分の広がり方や土踏まず付近の幅など自分の足の形状と合っているかを確認する。次に必ず左右の靴とも試着する。人の足は左右の大きさや形が微妙に違うから、片方だけはいただけで両足とも合うとは限らないからだ。靴を履いたらまずひもをゆるめた状態でつま先いっぱいに足を入れ、つま先を前につけたまま、膝を軽く曲げた状態でかかとに人差し指が入る余裕があることを確認。次に、親指と小指の付け根外側・土踏まず部分のフィット感、親指部分の高さの余裕をチェック。続いて靴を履いたままかかと部分を床に軽く叩きつけてかかとと靴を密着させ、左右の靴とも靴ひもを締める。このときに足指が動かせる程度の余裕、つま先に1~1.5cmほどのゆとりがあることを確認する。最後に店内や階段などで作られた専用コースを歩いてつま先、親指と小指の根本外側、くるぶし、かかと、足首などに擦れたり当たったりする感触、違和感やがないか確認する。
> 初心者の登山靴は軽登山靴やトレッキングシューズがおすすめだ。素材はできれば外側は革製、内側は「ゴアテックス」など防水通湿性に優れたものが良い。ただし、良いものはそれだけコストもかかる。今後自分がどれだけこの靴を使うか、店員と相談しながら選ぼう。
ちょっと問題が・・・
まずは1から
「足首がハイカットでないと、岩場、砂利、砂れきの続く山では靴の中に石が入ってしまう。」
ローカットでも靴の中に石が入ることなど殆ど無いですよ。これを心配する必要があるのは富士山の下山時ぐらいではないかな?そもそもハイカットでなければならない理由は、石を中に入れないためではないんです。もしそれが目的ならデザートブーツのほうが適している。それにこれがハイカットを選択する理由なら、チロリアンシューズの存在理由をどう説明する?スイスの山では石が入らないの?あるいは石がないの?
次いで2、 「足首をひねってねんざするのを防止するため」
ハイカットを選ぶ理由として良く言われるのがこれ。確かに捻挫を防止する効果がハイカットにはある。だが、捻挫の防止を目的としてハイカットが選ばれてきたわけではないんです。あくまで副次的な効果なんです。これもチロリアンシューズの存在が良い証拠になります。チロリアンシューズはローカット。その靴でスイスの牧童たちは日本の登山道などより急峻な土地で仕事をこなしてきた。スイスの牧童は捻挫しないの?ちなみにチロリアンシューズと同時期には、今のハイカットの登山靴のデザインは存在してます。
3、 「山の道は基本的に砂と岩。底が薄いものは切れて穴があくことがあり、柔らかい底は固い地面を歩くため疲れやすい。」
底が薄いものは切れて穴が開く?馬鹿も休み休み言ってもらいたい。見たことあるの?薄さでは、これ以上薄くはならない地下足袋ですら、切れたり穴が開くには相当の時間がかかります。いわんや普通のアウトドアシューズでこんなことはない。あったとしたら欠陥品。柔らかい底が硬い地面を歩くのに向かないなら、何で町で履く靴は底が固くないの?硬さで言えばコンクリートやアスファルトの方がはるかに硬いのではないの?
4、 唯一、これだけはまとも。選び方として間違っては居ない。ただ、足りない。靴を選ぶ際の時間。人間の足は、午後になると浮腫んで膨らむ。それを踏まえていないと、せっかく選んでも実際にフィールドに持っていったら靴擦れに泣くことになる。それと靴下のこと。実際に使う靴下を履いていくこと。もしくは持参して履き替えてフィッティングをする。靴の形状に関しては、上から見たぐらいで分かれば苦労しない。こればかりはシューフィッターに専用の計測器具で測ってもらい、それから試し履きをして確かめるしかない。それでもダメなケースが出てくる。本当に其の靴があっているかは実際にフィールドで使ってみないと分からない。私の経験したのでは、何時間も歩いたあとでないと不具合が出てこないようなケースもあった。店頭のフィッティングで出来るのは、どんなに優秀なシューフィッターが居たとしても、フィールドで致命的な状況に陥らないようにすることぐらいなんです。
私が一緒に靴を選ぶ場合にも、ハイカットで靴底の硬いものを勧める・・・というか強制します。 「これでなきゃダメ!」 …という具合に。 勿論、その理由は説明する。なぜハイカットなのか。なぜ靴底は硬くなければならないのか。その理由は先にあげたようなものとは全く別です。聞けば間違いなく納得できる。逆にその理由が分かれば靴の選択肢が広がる。ハイカットの登山靴も良いし、サンダルもいい。そういうフィールドも存在します。其の判別が自分で出来るようになる。先のような選び方では、金科玉条に「登山ではハイカット・・・」となるしかない。靴に限らないが必要なのは合理的な選択理由を提供することだと思う。それさえ与えられれば、自分のスキルに応じてフィールドに適した装備を選ぶことが出来るようになるので。
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